知財×経営がビジネスを進化させる。「特許動向検索」機能の共創ストーリー

2019年11月、経済情報プラットフォーム「SPEEDA」に、「特許動向検索」機能が追加されました。そこには「水と油」とも言われる知財と経営をつなげたいという開発チームの思いがありました。開発をリードしたSPEEDAの伊藤・斎藤・相川と、パートナーとして尽力いただいた近藤様、武藤様にインタビューしました。
(写真左から伊藤・武藤様・近藤様・斎藤・相川)

SPEEDAに「特許動向検索」ができた理由

――まず、「特許動向検索」機能を思いついたきっかけを教えてください。

伊藤:
SPEEDAはもともと、企業や業界情報をワンストップで得られるプラットフォームとしてスタートしました。10年前のリリース当初は金融機関やコンサルの方に広く使っていただいてきましたが、ここ3〜4年は、事業会社の経営企画部門の方々がメインのユーザーになってきています。

私はセールス担当として、いわゆる大手企業様にSPEEDAをどう活用していただくかを常に考えています。その過程で、偶然セイコーエプソンの知財部の方とお会いする機会がありました。2017年7月のことです。

当初は正直、知財部の方がSPEEDAを活用するシーンや価値をまったく想像できていませんでした(苦笑)。でも、初回訪問時のデモからとても感動してご評価いただき、すぐに導入が決まったんです。

伊藤 竜一 / SPEEDA Strategic Partner Division SPEEDA-INITIAL Sales Manager

SPEEDAを使っていただく中でコミュニケーションを深めていくと、たとえばクロスライセンス交渉とか、知財の方でもビジネス情報を使うことが多いということがわかってきました。「こういう機能がほしいんだよね」というご要望もかなり具体的に出てくるので、SPEEDAへの期待値も高いことがわかってきたんです。

そうして1年ぐらいかけて、30社ぐらいの知財部を中心とした技術系部門のお客様にお会いしました。自分の中でも「IPランドスケープ」というコアニーズが見えてきた中で、2018年8月に近藤さんにお会いしたんです。

近藤:
最初のきっかけは、SPEEDAさんが公開している、「経営企画部の課題とトレンドのレポート」でしたね。実は私たちも「経営と知財をつなぐ」をテーマに、「知的財産アナリスト認定講座」という講座を2011年からずっとやってきてるんです。年に3回やっているので、すでに修了者も780人ぐらいいて。

だから私たちも知財と経営の関係性についてはいつも考えていて、たまたま検索していたらSPEEDAさんのレポートに出会った。それで「SPEEDAってどんなもんなんやろ?」と無料トライアルを申し込んでみたら、中の人から「会いまへんか?」と(笑)。その日のうちか翌日だったかな。で、伊藤さんがやってきた。すごいスピードでしたね。

伊藤:
当時は自分の中でも、1年ぐらい知財について考え続けていた頃ですね。なので「知的財産の教育協会!? すごい、おもしろい団体の方とお会いできる!」という気持ちでした。

知財と経営は「水と油」

伊藤:
近藤さんと最初にお会いして、知財部の方々にとってSPEEDAがもっと価値を提供できるのではないかと、仮説も含めてお話させていただいたんです。そうしたらすごく共感、共鳴していただけて。私は勝手に「志同盟」と思ってやらせていただいています(笑)。

近藤:
共感したポイントは、日本の産業構造がすごく変わっていくなかで日本の企業がついていけてないのではという、私がずっと持っていた課題感でした。

近藤 泰祐 / 一般財団法人知的財産研究教育財団 知的財産教育協会 事業部長

知財についての考え方でいうと、1990年代にデジタル化を受け、組織のデータを経営の意思決定に活用する意味で「ビジネスインテリジェンス」という言葉が広まりました。これが20年遅れで知財の世界にやってきて、知財の情報がデータ化され、権利化や権利行使だけでなく経営の意思決定に、知財情報を使うことができるようになりました。しかし、知財情報がどんどんデジタル化され処理スピードも上がってきているものの、やっぱり使い切れていない。

知財情報の特性は何かと考えると、やはり「未来を見通す」ための情報なんですね。
ビジネスやマーケットの情報と同じぐらい、未来の事業環境を予測するために役立つ。だから、知財や特許の技術情報を経営企画がうまく扱えるようになると、日本の産業はもっと先に進めるはずです。

僕たちはこれまで知財の側からアプローチしてきましたが、伊藤さんたちSPEEDAは、ビジネス情報のほうからアプローチしている。一緒に何かできたら、すごいことが起きそうだね、という夢を一緒に語らせていただきました。

伊藤:
近藤さんとお会いした後、具体的なアクションプランの1つとして、イノベーションリサーチの武藤さんをご紹介いただいたんですよね。

武藤:
はい、そうですね。当社は特許データを分析することを仕事にしています。ただ他社様がやられているような、自社の特許を他社が侵害していることを調査するようなリサーチ業務ではなく、経営に資するような観点でデータを分析し提供するというビジョンでスタートしました。

私はもともと特許事務所にいたころにクライアント向けにビジネス分析サービスも提供していて、SPEEDAのユーザーでもあったんです。

ですので、イノベーションリサーチでも知財版SPEEDAみたいなサービスをつくりたいね、という構想をいろんな会社に話しに行っていました。ただ特許の話だけでは、マルチクライアント型の価値提供を広げるのは難しいところがあり、まずは個別分析サービスで実績をつくろうとこれまでやってきました。そこに伊藤さんからご連絡をいただいて、嬉しかったですね。

武藤 謙次郎 / イノベーションリサーチ 取締役副社長

伊藤:
イノベーションリサーチさんは、特許や知財の情報活用を特定の領域向けだけでなく、もっと広い世界に価値として届けたいと考えておられます。特に社長の小磯さんはその思いが強いと感じていますが、私たちも「経済情報で、世界を変える」というミッションを持っているので、ものづくりに対する捉え方や目線が近くて、一発で「いいな」となりましたね。これはすぐに進めたいと、社内のキーマンを何人か連れて行かせていただきました。

ユーザーと共創しながらつくりあげた

――ユーザーのニーズからの出発だったんですね。開発の立場からすると、セールスなどのフロントと一緒に開発するのは、あまりない経験かと思います。どのように進めていったのでしょうか?

斎藤:
お互いに見ている景色が違うメンバーが集まるチームなので、コミュニケーションを一番重視しようと決めました。最低でも週に1回は竜さん(伊藤)と絶対話す、みたいなことをチームで決めて、途中でコミュニケーションの齟齬が起きないようにしたんです。イノベーションリサーチさんとも同じ形で、コミュニケーションを重視して進めていきました。

最初に、「何のためにこれをやるのか」を明文化したインセプションデッキを作成しました。全員で集まって、誰に価値を届けるのか、納期とクオリティで迷ったらどちらを優先するのか、といったグランドルールみたいなものを決めるんです。まずは竜さんの熱い思いをとにかく聞いて、「これってこういうことですよね?」と言語化していきました。

斎藤 創 / SPEEDA Products Division エンジニア

――エンジニアとセールスだとけっこう、使っている言葉が違いませんか?

斎藤:
こちらが「なんて言えばいいんですかね?」と投げかけると、竜さんもいろいろ言葉を出してくれて、それですり合わせていきましたね。

伊藤:
個人的にはずっとセールスをやってきたので、開発の世界観に関わるのが初めてで、とても新鮮でした。

斎藤:
「ユーザーさんにこういう価値を届ける」というストーリー出しに関しても、エンジニアが書いちゃうとすごく技術っぽい言葉になって、本質的なところがわからなくなってしまいがちです。でも最初に竜さんに入ってもらったことで、ユーザーに届く価値ベースで明文化することができました。

SPEEDAの開発チームが導入しているエクストリームプログラミングという開発手法に、「ビジネスとの協調」という考え方があります。エンジニアとビジネスサイドは、それぞれが価値を感じるストーリーが違うので、その目線を合わせながら進めるべきだと書かれているんです。その基本に忠実に開発を進めた感じですね。

――プロダクトができてきて、現場から「これは違うな……」とはならなかったのでしょうか?

相川:
やはり最初にすり合わせているので、そこは少なかったですね。普段のコミュニケーションもSlackですし、そこにイノベーションリサーチの小磯社長にも入っていただいていたのでスムーズでした。

斎藤:
イノベーションリサーチさんには特許動向のデータを提供いただいています。「こういうデータありますか?」とデータを出していただいて、実際のデータを見て「やっぱりこういう出し方にしてほしいです」といったやりとりを、頻繁にさせていただきましたね。「昨日の今日で申し訳ないんですが、やっぱりこっちの方が良いと思うので」と。最後の方はだいぶご負担をかけてしまってたんじゃないかと思います(苦笑)

(一同笑)

伊藤:
フォローするわけではないですが、今回は関係者全員が見られる共同Slackがあったことが大きかったのではないかと思います。そこでどんな開発が進んでいるかなど、お互いのやりとりや情報が全部見えるようになっているので、こちらの状況もある程度汲んでいただけたのかなと思います。

知財業界の「黒船」になっていってほしい

――11月に開催された「特許・情報フェア」でのSPEEDAブースに、エンジニアも参加したと聞きました。

斎藤:
はい、竜さんから声かけていただいて、ほぼ全エンジニアが参加しました。ブースで説明した人もいます。

相川 裕太 / SPEEDA Products Division エンジニア

最初はみんな「えっ、行くの?」みたいな感じだったと思います。でもやっぱり行くべきだよねとなって、ほぼ全員が参加しました。やっぱり普段お客様と接する機会は少ないので、セールス・マーケの皆さんがどういうトークをされているかを聞くのは勉強になりましたし、自分たちのつくった機能が実際に喜ばれている声を聞けるのは新鮮でした。

あとデモをしている様子を見ながら「あの画面ちょっと崩れてたな……」とバグを見つけることもありました。

相川:
デモ中に2つぐらいバグが出ました……。

斎藤:
その場にエンジニアがいたのでなんとか回避策を出すことができましたね。
でもやっぱり生の声で「このグラフの色をもっときれいにしたい」とか「このデータは見れないの?」といったご質問を聞くと、需要の高い機能がリアルに伝わってきてよかったです。

相川:
僕も同じですね。開発の最初の頃って、竜さんの描いている世界って本当かな? 幻想じゃないのかな? みたいな感じで。

でも特許情報フェアの現場に行って、実際に使っていただいているのを見て、お客様の声を生で聞けたというのが嬉しかったですね。竜さんを信じてやってきてよかったなというか(笑)。

武藤:
特許・情報フェアは私も見に行きました。最初、会場の雰囲気は「SPEEDAという黒船が来たぞ」みたいな感じでしたね。言っても狭い業界なので、出展しているのは知財専業の会社が中心なんです。そこに何か、新しいことやってる会社が来たぞ、と。

そんな雰囲気を私も感じていたんですけど、実際に行ってみたらすごくコンパクトなブースで、エンジニアの方もたくさんいて、展示員に紛れながらデモ画面を説明していて。あれ、思ってたのと違うぞ、意外と会社を挙げて、真剣に知財マーケットに向き合ってるんだなと印象づけられたのではないかと思います。あれがすごくよかったですね。

「特許・情報フェア」でのSPEEDAブース

伊藤:
ありがとうございます。

今回、社内外の皆さんの協力を得て、「特許動向検索」機能をリリースすることができました。今後の目標は、経営の指標として知財が当たり前にある世界をどうつくっていくかです。「IPランドスケープ」は昨今のトレンドワードですが、欧米ではすでに当たり前の概念で、日本でも経営企画部門に知財部がある会社さんも増えてきています。でも実際に知財と経営を、どのように結びつけていけば良いかわからない。私たちはまだまだ未熟ですが、今後その2つを結びつける接着剤として貢献していければと思っています。

近藤:
知財と経営企画をどうやってつないでいくか。だから今回の「特許動向検索」機能も知財だけのものになってはいけないし、SPEEDAも、経営企画だけのものになってはいけない。両方にファンになってもらうことがすごく大事です。

だから今のフェーズでは、SPEEDAのメインユーザーである経営企画の人たちが、特許や知財の情報が、経営に資する価値があることに気づいてくれればいい。「どうなってるんだ」、「もっと知りたい」という気持ちが出てくることが一番大事だと考えています。それが達成できれば知財部門をもっと活用するでもいいし、社外に出れば、もっとすごい人たちがいっぱいいますので、彼らを頼ることもできます。知財と経営の両者がもっと近づくためにも、お互いに歩み寄っていかないといけない。

知財の情報を経営がうまく活用している日本企業の成功モデルのひとつは、セイコーエプソンさんだと思います。伊藤さんのビジョンはセイコーエプソンさんのモデルを向いていますし、セイコーエプソンさんはSPEEDAを活用されています。ビジョンははっきりと見えているので、あとはそこに向かっていくことだと思います。

武藤:
特許やIPランドスケープを経営に活用したい、という声はよく聞きます。特に多いのは、新規事業探索。ただ実際にどうやるかわからないといった方が多い印象です。

1つの方法としては、特定の技術分野を掘り下げて分析するというよりは、特許に出されているようないろんな技術を俯瞰して見たり比較したりすること。そうすることで、自分たちがどこにフォーカスすれば良いか、最初のとっかかりが見えてくるはずです。ただ、それには多くの分野にわたる分析データが必要で、そのようなインフラはこれまでほとんどありませんでした。それが特許動向検索機能としてSPEEDAに実装されたのは有意義ですね。

また特許データだけを分析だけしても、それが実際のビジネスとは紐付きにくいという課題もあると思います。ですが今回のSPEEDAの新機能を使うと、特許からだけでは見えにくい、この会社は総合電機なのか、素材なのか、部品なのかなど、会社ごとの基本的な性格が容易につかめます。実際に分析の仕事をしている立場で言うと、この情報は外せない基礎的な情報ではあるものの、個別で調べると手間がかかる部分なんですよね。

知財情報とビジネス情報が紐付くことで、分析もより深堀りできますし、たくさんの気づきを得られます。知財に限らずどの領域でもそうですが、データを分析した後の発見や提案こそが価値だと思います。経営企画と知財の垣根を取り払って、これから一緒に成長していきたいですね。

「特許動向検索」機能のプロジェクトメンバーと、近藤さん・武藤さん

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