「中国語版は最初の一歩」――SPEEDAがアジア・中国に注力する理由

ユーザベースの創業事業であるSPEEDAは、2013年に香港とシンガポールに進出。SPEEDA Asiaとしてグローバル展開の第一歩を踏み出しました。その後、スリランカ、タイ、上海と拠点を拡大してきたSPEEDA Asiaは、今年4月に中国語版をリリースするなど、現在中国市場に注力しています。


今回は、そもそもなぜユーザベースがグローバルに挑戦し続けるのか、その中でなぜ最初の展開先として中国市場を選んだのか、ユーザベース共同創業者であり、SPEEDA事業CEOの稲垣と、SPEEDA Asia CEOの内藤に聞きました。

稲垣 裕介

YUSUKE INAGAKI

SPEEDA CEO / Uzabase Co-CEO

アビームコンサルティングに入社し、テクノロジーインテグレーション事業部にて、プロジェクト責任者として全社システム戦略の立案、構築、金融機関の大規模データベースの設計、構築等に従事。豊富なシステム技術の知識、経験を基に株式会社ユーザベースを設立。2017年よりユーザベースの代表取締役に就任。SPEEDA事業におけるCEOも兼務。

内藤靖統

YASUNORI NAITO

SPEEDA Asia CEO

2016年にユーザベースのSPEEDAアジア事業に参画。コンサルティングチーム統括、マーケティング統括等を経て、現在SPEEDAアジア事業CEO。営業・マーケティング部門の責任者を兼務。ユーザベース参画前は、コンサルティング会社のアクセンチュアにて製造業および小売業の組織戦略、業務改善、物流改革プロジェクト等に従事。その後、香港拠点の事業会社に転じて、大中華圏でのM&A後の組織改編にともなう戦略立案、組織設計および各種事業統合を推進。一貫して、事業戦略上の意思決定を支援するサービスに従事。

ミッションの実現には、グローバル展開が不可避だった

――ユーザベースはミッション「経済情報で、世界を変える」で、創業当初からグローバルに挑戦することを規定しています。そもそもなぜグローバルに展開しようと思ったのですか?

稲垣:
経済情報プラットフォームを提供する以上、グローバルであることは必須命題だからです。

僕らが創業した12年前でも、企業が何らかの意思決定をする際に、日本国内の情報だけでは十分とは言えませんでした。現在はテクノロジーの進化によって、さらにボーダレスになっており、グローバルな情報を提供しなければ、ユーザーは正しい意思決定をすることができません。
意味のあるグローバルな情報を取得するには、現地での情報収集が不可欠でしょう。

――逆に海外から日本に対して投資を考える際、当初から「日本はブラックボックスだ」と言われ続けていましたよね。

稲垣:
こんなに情報開示しているのに、なぜだろう? と僕も最初は思っていましたが、要するに日本語で発信しているからなんですね。海外の投資家は誰も読めない。

だからこそ「言語バリア」を超えるプラットフォームを作ることには、非常に大きな意味があります。グローバルで通用するようなデータを格納できれば、日本以外の市場でも役に立てるプロダクトになるはず。
僕らのミッションを考えれば考えるほど、世界に出ていく選択は当たり前なんです。

内藤:
今回、中国語版SPEEDAを作ったのも、言語バリアを超えるため。現在の中国のお客様は日本企業が中心ですが、実際に利用されている現地ユーザーの中には日本語がそんなに得意じゃない人もいらっしゃいます。
私も仕事で英語を使っていますが、何か調べるときは日本語で調べたほうが楽ですよね。それと同じで、現地のお客様は中国語でコンテンツが見れるほうが使いやすいはず。

日本企業の中国支店のお客様企業においては、日本語ができる人だけでなく、会社全体でSPEEDAを使ってほしい。全社で同じプラットフォームを使って、情報をやり取りできるようにしていきたいと考えています。


SPEEDA Asia内藤

まずはニッチで勝つために、アジア、中国市場を選んだ

――グローバルに展開する際、アメリカやEU圏などの選択肢もあったと思います。なぜ最初の展開先として、アジア、中国を選んだのか教えてください。

稲垣:
ポイントは「ニッチを突く」こと。国内でもニッチを突くことで成長してきたからです。
SPEEDAを最初にリリースした当時、英語の情報プラットフォームはありましたが、グローバルの企業データが入っている日本語のデータベースは、他にはほぼ存在していませんでした。日本人にとっては当然日本語のほうが使いやすいですよね。

グローバル展開を考える際も、ニッチを狙う考え方は重要です。その前提に立つと、アメリカはすでにレッドオーシャン。市場が飽和しており、英語の情報プラットフォームは山のようにあります。そこにいきなり日本のプラットフォームを持って行っても勝てません。

アジアというニッチな市場のデータベースとして、どこにも負けないプラットフォームを作れたら、アメリカやEU圏に行っても勝負ができるはずです。だからまずはアジアから展開することを決めました。

内藤:
「アジア各国の情報が豊富である」というSPEEDAのエッジを作ってから、欧米市場に出ていくというステップ感ですよね。アジア各国の成長率や20〜30年後に世界に占めるアジアのGDP比率の割合を考えると、アジアの成長に否が応にでも注目が集まるはず。投資先・進出先として注目の市場になるはずです。中国やベトナム、タイの情報が日本語や英語で読めることは、将来の大きなアセットになると思っています。

2013年に私たちがアジア進出した当初は、シンガポールと香港に拠点を置きました。両都市は地域統括拠点が置かれるハブであることと、金融都市であることが理由です。シンガポールは、ASEAN市場を所管している金融機関および統括機能をもつ商社はじめ、事業会社をお客様に、香港は香港及び中国大陸を所管している金融機関・事業会社をお客様にしてきました。

私が入社した2016年当時、SPEEDA Asiaにはすでに200IDほどのご契約がありました。そのうち、中国を含む大中華圏中国では約3割、東南アジアでは約4割が現地のお客様だったと記憶しています。現在はアジア各国の中でも、中国に注力しています。

――それはなぜですか?

内藤:
2013年からシンガポール・香港で事業を続けてきた中で、現地にいる日本企業のお客様には、ある程度までお使いいただけている状態になってきました。

その状況を踏まえ、今後も高い成長率と利益創出の双方を実現するためには、最も高い成長ができるマーケットに集中すべきと考えました。その結論が中国へのフォーカスです。中国では日本企業をはじめとする外国企業の投資意欲が高まり、日本企業の中国事業の規模も大幅な成長を見せているからです。東南アジアも重要なマーケットであると認識をしていますが、選択と集中の中で中国に投資をすることを決めました。
この意思決定をしたのが、2018年の11月でした。

稲垣:
SPEEDAは競争環境がある中で、市場や競合をしっかり分析していただくためのもの。だから、ある程度の企業規模かつ情報に関するニーズが高いお客様が多くいらっしゃいます。
東南アジアではおかげさまで、上記の層のお客様にかなり使っていただけるようになったという感覚があります。将来的にさらにユーザー数を伸ばすには、現状のプロダクトのままでは難しいと感じていました。

さらに市場成熟度も重要です。東南アジアなどの新興国で、国自体が右肩上がりに成長している場合、競合を深く分析して作らなくても、マーケットニーズにフィットした商品であれば、市場の拡大と共に程度の売上が見込めます。経営者の直感に近い領域なので、結果的に中国でも同じようなプロダクトが複数あるような状態が普通でした。

しかし中国市場はここ数年で劇的な変化を遂げました。国として対外投資を控える方針に転換したことが大きいですね。
その結果、市場がかなり成熟しつつあり、同じようなプロダクトを作っている会社同士も、競合を意識し始めました。企業分析や海外進出の可能性を模索するなど、情報に基づいた分析を必要とする会社も増えてきています。

内藤:
劇的な変化の背景には、「中国製造2025」やAI強国化などの政府方針、新しいものを受け入れる消費者志向、データビジネスにおいて重要なデータの取得しやすさが挙げられます。市場規模の小さい日本や、プライバシーに厳しいアメリカに比べ、中国は13億という巨大な人口・大量のデータを抱え、かつ政府施策によりデータビジネスに不可欠な情報を取得しやすいという環境が整っています。

そして何よりビジネスパーソンのハングリーさも重要です。これらの要因が合わさることで、次世代エネルギー自動車、新素材、新金融、新小売、スマートシティ、スマート製造などといったイノベーションが次々と生まれてくる。そこに大きなチャンスがあり、SPEEDAがお客様の役に立てると確信しています。


SPEEDA 稲垣

中国市場のロードマップ

――中国語版ができて、今後はいよいよ中国の現地企業にも営業を積極展開していくフェーズだと思います。どのようなロードマップを描いているのか、教えてください。

稲垣:
SPEEDAはもともとあった英語版と日本語版に加え、中国語版も提供できるようになりました。英語と比較すると、中国語と日本語は特殊性が高く、参入障壁も非常に高い。逆に言えば、中国や日本のテクノロジー商材で、グローバルプラットフォームになっているものは1つもないのが現状です。

英語版のSPEEDAは、社内にいる英語メンバーのおかげで高いプロダクトレベルに達していますが、中国市場に本気で展開していく際には、やはり言語に精通した現地のプロダクトオーナーが必要だと考えています。中国語版SPEEDAもメンバーのおかげでリリースできましたが、業界分析の部分が自動翻訳に頼っている部分もまだ多く、現地のお客様に見せると、「翻訳ですか?」と聞かれるケースがまだまだ多い。つまりナビゲーションや言葉の使い方など、本当の意味でローカライズできていない可能性があるんですね。

さらに現地で本当に求められていることを深堀りしていくと、中国語翻訳専任のチームを立ち上げたり、中国市場の展開に本気でコミットするプロダクトマネージャーに任せたりといった体制が必要になります。これは中国での成長戦略における重要なポイントの1つです。

内藤:
中国語版のリリースは、最初の一歩を踏み出したにすぎません。あくまで、日本企業中国拠点のお客様にSPEEDAを広くご利用いただくためのものです。中国企業の海外進出などのニーズに応えるなど、中国企業に使っていただくためにも、SPEEDAをもっとローカライズしていく必要があると考えています。

――キーパーソンを採用後の展開についても聞かせてください。

内藤:
SPEEDAのグローバル展開には、「どの地域のコンテンツをつくる・集めるか?」「どの地域にてお客様を広げるか?」の2軸があります。

前者については、中国のコンテンツをさらに強化していく予定です。今、さまざまな国が「中国で何が起こっているのか」を知りたがっているはず。イノベーション大国である中国の現状について、言語バリアを超え、付加価値の高い情報を見ることができるプロダクトにしていきたいですね。

後者については現状、日本、上海、シンガポールを中心にアジアのお客様を増やしています。将来的には、中国の情報をエッジにして、アメリカなど他国にも展開していけると思っているので、コンテンツは圧倒的なエッジを立てていくつもりです。

いずれにしても採用が重要なポイントになります。プロダクトオーナーをしながら同時に新規開拓をも任せられるような方に、ぜひ入っていただきたいと考えています。なかなか難易度が高いですが、中国生まれで海外経験もあり中国でマネジメントをされている方、ベンチャー経営者など、様々な方にお会いして良いご縁がないかアプローチをかけているところです。

稲垣:
先日リリースも出しましたが、中国コンテンツのさらなる充実を図るため、「企査査(qichacha)」と提携することになりました。

これまでSPEEDAには中国の上場企業データはあるものの、未上場企業やベンチャーのデータが取得できていませんでした。それが「企査査」との提携により、30万社だった企業データが500万社と、15倍以上に増えます。

中国のベンチャーデータの日本企業向けの配信は、「企査査」としても初の事例と聞いています。「企査査」を提供する蘇州朗動網絡科技有限公司のCEO、楊京氏も今回の提携を非常に喜んでくださっています。

「企査査」のデータを取り込めることは、SPEEDAにとって大きな意味があるし、事業提携そのものも大きな進歩だと考えています。
今後も現地のメンバーやパートナー様と協力しながら、一歩ずつ現地に根ざして、ユーザーの皆さまがよりスピード感を持って意思決定をする一助になっていければと思います。

SPEEDA Asia内藤・稲垣

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