満を持しての交代
――千葉さんは、2018年にユーザベースに入社されました。村上さんと二人三脚で経理財務、IRなどを担ってきましたが、率直に言ってどんな一年でしたか?
千葉:
「ユーザベースには、ミッション・バリューに共感して入社しました。最初の僕の役割は、上場もして、グローバルM&Aも果たしてどんどん大きくなる経理財務(Accounting&Financeチーム)の体制を整えることでした。経理財務という仕事は1年をとおしてやっとどんなイベントがあるのかがわかるので、ひたすら村上さんにサポートしてもらっていた感じです」
村上:
「私から見た千葉さんの印象は、とにかく冷静だということ。会社の規模も大きくなり、昨年はQuartzのM&Aなど大きなイベントもありましたが、千葉さんはその都度冷静に判断し、チームの状況も見ながら適材適所に人材を配置していました。その結果、とても強固な信頼で結ばれたチームができ、これからの10年でさらにグローバルカンパニーになるユーザベースの基盤ができつつあると思います」
グローバルカンパニーのCFOとして「やるべきこと」をやる
――お二人的には、「満を持しての交代」だったんですね。実際にオファーがあったとき、迷いはなかったのでしょうか。
千葉:
「迷いがなかったと言ったら嘘になります。1つは、これまでユーザベースのコーポレートをつくってきた村上さんと同じことができるかという点。でもこれは、同じ役割・能力じゃないからこそ、僕らしさを発揮することが大事だと思います。具体的に言うと来年はグローバルで決算を迎える初年度になるのですが、この経験は村上さんにもないですし、社内の誰にとってもチャレンジングです。だったらみんなで議論しながら、ユーザベースらしいやり方をつくっていけばいいかなと。
2つめは、経理財務のイベントを1年しか経験していないこと。これは毎年起こる出来事は変わるので、いつかは覚悟を決めるしかない。
最後の3つめは、僕自身が「管理だけの人」じゃなくて、もっと事業寄りのキャリアを志向していたことです。でも例えば今アメリカに行ってQuartzのCFOをしている太田(智之)も、「事業がわかるCFOになりたい」と言ってSPEEDA事業で経営を経験し今はQuartzのCFOをしていますし、山中(SPEEDA Japan COO)も三菱商事で経理をしていましたが、今はSPEEDAの日本事業を引っ張っています。要は「やるべきことをやる」ことが大事なんだと思っています」
「迷ったら挑戦する道を選ぶ」
――村上さんは「新しいビジネスに挑戦する」と発表していますが、具体的にはどんな事業をされるのでしょうか。
村上:
「私自身、ユーザベースに入社する前から独立志向がありました。そこを(ユーザベース創業者で元同僚の)新野さんに誘ってもらって、40人ぐらいしかいない会社のコーポレート部門の立ち上げや東証マザーズへのIPO、グローバルM&Aなどたくさんのことを経験させてもらいました。
ユーザベースも創業10年を超え新しいフェーズを迎えるなかで、自分の中でやはり挑戦したい気持ちを抑えられず、いよいよ独立するタイミングが来たのではないかと思い、経営陣や千葉さんに相談させてもらった次第です。
私が持っているこの経験や、ユーザベースでつくってきた仕組みや制度は、日本のスタートアップにとって最先端のものが詰まっています。今後はこの経験をもとに、さまざまなスタートアップの支援をしていくつもりです。ユーザベースは大好きな会社ですので、私が価値を発揮できる部分がある限り、ビジネスパートナーとして引き続き関わっていく予定です」
千葉:
「私自身も前職や前々職でIPOやバイアウトを経験してきたので、そういうニーズがあることはすごく理解できますし、非常に価値のある挑戦だと思います」
ユーザベース コーポレートづくりのこれからの挑戦
――千葉さんのCFO就任と合わせて、経理財務以外のコーポレート部門を率いる松井(しのぶ)さんのCOO就任も発表されました。二人でどのようなコーポレートをつくっていくのでしょうか。
千葉:
「まず僕が担当するAccounting&Financeチームのところで言うと、グローバルで全メンバーが正しく意思決定できる、財務の基盤をつくりあげます。たとえばSPEEDAの過去の契約ID数や、NewsPicksの有料課金ユーザー数などの重要KPIを、国境関係なく誰でも・いつでも参照できるようにします。
スタートアップあるあるだと思うのですが、ユーザベースのシステムは「うなぎ屋のタレ」のようになっていて、必ずしもスマートとは言えない状況です。これを昨年立ち上げたコーポレートエンジニアリングチームなどと一緒になって、日本にいても海外にいても正しい情報にアクセスでき、意思決定できるようにしたいと思っています」
――COOの松井さんはタイからのリモートマネジメントにチャレンジしますが、お二人にとって不安はないのでしょうか。
村上:
「そこはやってみないとわからないですが、ユーザベースの良いところは、まずやってみて、何かうまくいかないのであれば、そこを改善していくサイクルが徹底されているところです。
たとえば(創業者の)新野は2014年、共同代表のままシンガポールの立ち上げに移住しましたが、会社としての大きな悪影響は出ませんでした。自走できるプロフェッショナルが集まっているからこそ、逆に成長できる環境にできているのだと思います」
千葉:
「リモートマネジメントがうまくいかないのは、マネージする側とされる側で明確に分かれている場合だと思います。ユーザベースではそもそも出社義務もないですしリモート勤務が当たり前なので、実際は「何が変わったの?」という程度かもしれないですね」
村上:
「ユーザベースにいて本当に嬉しいのは、こうしてチャレンジする人を応援してくれるというカルチャーです。CFOという立場だった私が独立を相談したときも、経営陣を含めてみなさんが応援してくれたのは、感謝しかありません。
ユーザベースのことはこれからも大好きですし、私に価値があると感じていただける限りは、ビジネスパートナーとして関わり続けていけると嬉しいなと思います」
千葉:
「スキルや経験もあって、かつバリューが合ったメンバーというのはなかなか得難いので、こちらとしても嬉しいですね。とはいえ突然、「すみません。代わりの人が採用できたので契約更新なしで」となるかもしれませんが(笑)」
(一同笑)