2018.06.29 UB Ventures

重視するのは「強烈な原体験」。ユーザベース第5の事業 UB Ventures とは

ユーザベースから新たなVC事業「UB Ventures」がスタート。世界を目指す起業家に対して、SPEEDAやNewsPicksなどを生み出してきた知見をもとに寄り添えるVC(Venture Capital)を目指して、現在準備を進めています。その背景や、どのようなVCをつくろうとしているのか、代表取締役の岩澤脩へのインタビューを行いました。

岩澤脩OSAMU IWASAWA

UB Ventures 代表取締役

慶應義塾大学理工学研究科修了。リーマン・ブラザーズ証券、バークレイズ・キャピタル証券株式調査部にて企業・産業調査業務に従事。その後、野村総合研究所での、M&Aアドバイザリー、事業再生計画立案・実行支援業務を経て、2011年からユーザベースに参画。執行役員としてSPEEDAの事業開発を担当後、2013年から香港に拠点を移し、アジア事業の立ち上げに従事。2018年、UB Venturesを立ち上げ、代表取締役に就任。

(後編はこちら)

ベンチャーキャピタリストになるのが夢だった

僕は2017年12月までの4年間、香港でSPEEDAアジア事業の立ち上げに従事していました。ゼロイチのフェーズがひと段落し、後任者にバトンタッチをして帰国。次は何をやろうかと考えつつも、4年も日本を離れていたのでインプット期間として少し休みたいと考えていました。

何をしようか考えているときに梅田(共同代表)から言われたのが、「次はVCどう?35歳までにベンチャーキャピタリストになりたいって言っていたよね?今年35歳だよね?今しかないじゃん」と。たしかに、入社時にそんな話をしていたことを思い出したんです。

学生だった2004年頃、僕はとあるVCでインターンをしていました。当時はネットベンチャーが急成長していた時期で、IT業界での起業家や、起業したい学生が次々と生まれた時代です。スタートアップが生まれ成長していく過程で、起業家だけでなく、それを支えるベンチャーキャピタリストの存在が必要であることを学びました。

それと同時に、僕はベンチャーキャピタリストとして多くのスタートアップが育っていく場に立ち会うことにワクワクしていたんですね。だから、いずれはベンチャーキャピタリストになりたいと夢を描いていました。

アジア事業の立ち上げに奔走するうちにすっかり忘れていましたが、思わぬところでつながったので、これは挑戦するしかありません。「ユーザベースにしかできないVC」「今までにない新しいVC」を立ち上げることを決め、帰国後すぐに動き始めました。

 

 

世界を目指す次世代起業家を支援したい

まず誤解がないようお伝えしておきたいのは、UB VenturesはCVC(Corporate Venture Capital)ではなく、純然たるVC事業だということです。デジタルメディアやB2B/SaaSの業界で新しい価値をつくれることや、僕たちの事業経験が成長に貢献できることが見込めれば投資を検討します。

なぜCVCではなくVC事業として立ち上げようと考えたのか。理由は2つあります。

一つは、世界で大きな業界転換が起きていること。

ユーザベースグループは、2017年3月にDow Jones社とパートナーシップを組んで、NewsPicksの米国事業をスタートしました。そのなかであらためて気付いたのは、世界のメディアビジネスは、分散型・広告モデルからコンテンツに対して課金をするサブスプリクションモデルに転換をしつつあることです。特定の読者層にエッジの効いたコンテンツを提供するバーティカル・サブスクリプションモデルのメディアスタートアップが多く立ち上がっていました。

 


米国版NewsPicksの紹介ページ

 

日本においても、ここ数年で多くのB2B/SaaSスタートアップが生まれ、これまでクラウド化していなかった業界にも、業界特化型バーティカルSaaSが多く立ち上がっています。僕たちがSPEEDAを立ち上げた時代とは違って、ユーザー側もSaaSを導入することが当たり前になっています。

デジタルメディアとB2B/SaaSが転換期にあるなかで、ユーザベースの経験を活かし、VCという立場からイノベーションを仕掛けて、業界自体の発展に貢献することは意義があるのではと考えました。

もう一つは純粋に、次世代の起業家を応援したいと思ったこと。ユーザベースは創業期から世界進出を視野に入れており、僕自身も、SPEEDAのアジア事業を立ち上げました。その間も、いろんなスタートアップが海外に進出しては日本に戻っていく姿をいくつも見てきたんですね。そんななかで、もっと海外で事業を展開するスタートアップが出てこないと、日本の競争力は上がらないのではないかという課題を感じていました。

海外で失敗してしまう理由はいくつかあると思います。僕の経験では、海外進出が軌道に乗っているもしくは乗り始めているスタートアップは、創業者や経営陣など、「強烈な原体験」を持った人間が先頭に立っていることが多いと思います。

 

ユーザベース、SPEEDAの原体験

ユーザベースの場合は、SPEEDA立ち上げの原体験を持った創業者の新野がシンガポールに、そしてSPEEDAの初期ユーザーとしてその価値をリアルに感じた僕が香港に行き、現地採用もしながらSPEEDAのアジア事業を立ち上げました。とはいえ、すべてが順風満帆だったわけではありません。現地に行ってすぐに、大きな壁にぶつかりました。日本でプロダクトを完成させてから行ったため、現地で必要とされるソリューションとのミスマッチを起こしてしまっていたのです。

きっと原体験のない人が旗振りをしていたら、この時点で「撤退」という判断をしたかもしれません。でも強烈な原体験を持った僕たちは、「世界中にSPEEDAの価値を届けたい」と、撤退ではなく一度日本に戻り、プロダクトをつくり直して出直すという選択をしました。

結果、3年で立ち上げる計画が4年になりましたが、オフィスも家もない状態から始めたアジア事業は、今では香港に8人、上海に6人、シンガポールに20人、スリランカに35人と、アジア全体で70人以上のメンバーが活躍するほどになりました。

だから、アジア進出したいという次世代の起業家に対して、僕らは生々しいアドバイスができると思うんです。加えて、今は、アジアだけでなくNewsPicksでのニューヨークでの知見もある。この知見をおしみなく提供することで、「日本発のスタートアップでも海外に進出するのは当たり前」という世界観をつくっていきたいと思っています。

 


ユーザベースインターンでの一コマ

 

ユーザベースグループにしかできない、新しいVC像

UB Venturesのミッションは、スタートアップ投資をもっと身近にすること。ユーザベースの強みをVCのビジネスに持ち込み、ユーザベースグループにしかできない新しいVCのビジネスモデルをつくり、SPEEDAやNewsPicksで実現してきたことを、UB Venturesでも挑戦しようと考えています。

ではユーザベースグループの強みというと、「プラットフォーム」「コンテンツ」「コミュニティ」の3つを組み合わせたビジネスを得意としていることです。

 

 

VC事業というのは構造上、起業家、投資家、VCの3者が分断されがちです。

これを解消するために、UB Venturesでは、起業家と投資先とVCがつながっているコミュニティをつくりたいと考えています。

たとえば、オンライン上に投資家と起業家だけが参加できる場をつくって、投資先の直近の情報や投資家のサポート状況が見える仕組みをつくってもいい。オフラインでそういった知見をクローズドに語り合える場をつくってもいい。なぜその企業を立ち上げたのか、世界をどう変えるのかを伝えることで、投資家にもVCにも「応援したい」「情報を提供したい」といった思いを醸成する強いコミュニティをつくれたらいいなと思っています。

投資家にとっては、今まであまり知る機会のなかった、起業家の思いやビジョン、そのときどきでの生々しい状況、失敗と成功をリアルに知ることができる。起業家も、「資金調達しました」のニュースではない自分たちの「今」を発信できる。そして僕たちには、それを実現するためのテクノロジーや知見もあります。

世の中では調達やEXITなど、成功したスタートアップのニュースが注目されがちですが、UB Venturesのコミュニティには、リアルな起業ストーリーが詰まっている状態にしたいと思っています。

 

起業家・投資家から信頼されるVCに

投資する事業領域は、自分たちが目利きできる領域に限定します。一つは、次世代のプラットフォーマーやコンテンツクリエイターなどの「経済メディア・ディスラプター領域」。もう一つは、ビジネスパーソンの働き方に革新をもたらす「ワークスタイル・イノベーター(B2B/SaaS)領域」です。

 

 

この領域で、将来的にはサブスプリクションプラットフォーム、コンテンツ、コミュニティの3つを融合したビジネスに発展するかどうかを一つの基準に投資をします。

ただ、一番大切にしたいのは、起業家が明確な原体験を持っていること。なぜその事業をやるのか。本当に手触り感のある領域でやっているのか。とにかく非効率な情報収集やエクセルワークを解決したいという原体験からSPEEDAが生まれたように、そういった原体験があれば、やり抜くことに全力でコミットできると思うのです。

何かを成し遂げたいというWill(意志)は、強烈な原体験からしか生まれません。原体験に基づいて新しいことをやろうとしている起業家には、とことん寄り添いたいし、僕らは最後まで寄り添うキャピタリストでありたい。

ユーザベースも、苦しい時に寄り添ってくださったVCがいたから、今があります。だから、ユーザベースがVCから受けてきた支援を、UB Venturesとして次につなげたい。VCのビジネスモデルを再定義し、世界中の起業家、投資家に信頼されるVCとなれるよう、これから本格始動します。

 

UB Venturesのキャピタリスト3人による鼎談コンテンツも公開しています。 UB Venturesの投資哲学について知りたい方はぜひご覧ください。

起業家が困ったときに寄り添えるVCでありたい。僕らがUB Venturesをはじめた理由

 

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