2018.06.21 Uzabase Corporate

上場しても自由な会社のつくり方〜ほぼ日、ユーザベースの場合〜

SPEEDAやNewsPicksなどを提供するユーザベースでは、「挑戦する人を後押しする」をコンセプトに、コーポレートメディア「UB Journal」を立ち上げました。このUB Journalでは、既存の常識にとらわれずに自由な発想で活躍されている方をご紹介していきます。


記念すべき第一回目のゲストには、株式会社ほぼ日 CFOの篠田真貴子さんをお招きしました。上場しても自由な社風を保つ秘訣を、同じくワーキングマザーで、ユーザベースでコーポレートを統括する松井しのぶが伺います。

篠田真貴子MAKIKO SHINODA

株式会社ほぼ日 CFO

慶応義塾大学経済学部卒業。1991年日本長期信用銀行(現新生銀行)に入行。96~99年ペンシルバニア大学ウォートン校で経営学修士(MBA)、米ジョンズ・ホプキンス大学で国際関係論の修士学位を取得。98年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社、2002年ノバルティスファーマに転職。03年第1子出産。07年ネスレニュートリションに移籍、第2子出産。08年東京糸井重里事務所に入社、09年取締役最高財務責任者(CFO)に。

松井しのぶSHINOBU MATSUI

Corporate統括 執行役員

公認会計士。国内大手監査法人で2年ほど会計監査業務に従事後、PwC税理士法人で8年ほど国際税務のコンサルティングマネージャーに従事。その後、家庭の都合でトルコで4年半を過ごし、帰国後にユーザベースに入社。2018年、Corporate統括 執行役員に就任。

「立ち上げ期の会社」から「大人の会社」へ

松井:今日はよろしくお願いします。ほぼ日さんといえば糸井重里さんがインターネットの初期から続けているウェブサイトの会社として知られていますが、篠田さんはどのタイミングでほぼ日に合流されたんでしょうか?

篠田:私は2008年10月に入社しました。知人の紹介で最初はお手伝い感覚で関わったのがきっかけですが、大企業の経験しかない私は、当時のほぼ日のバックオフィスにびっくりしました。たとえば、請求と支払について、経理との連携が不十分なために、プロジェクト担当者に負担をかけてしまう状態で、ヒヤッとすることもありました。みんな誠実で一生懸命なんですけど、仕組みが整っていないせいで、個人に過剰な負担がかかっているという状況でした。

 

 

松井:ユーザベースも似たような状況でした。私は現CFOの村上と大学時代からの友人なんですが、いつもFacebookに社内イベントの写真などをアップしてて楽しそうな会社だな、ぐらいの軽い気持ちで遊びに行ったんです。そうして気づいたら入社することになっていました(笑)。

篠田:ベンチャーあるあるですね(笑)。

松井:当時は創業事業の「SPEEDA」をメインビジネスとして提供していて、「NewsPicks」はちょうどアプリを無料で出し始めたくらいのフェーズでした。上場を見据えていたので、勤怠管理など、少しずつインフラ整備を進めていったんです。

ようやく社内が管理の大切さを理解してくれてきたタイミングで、新規事業のNewsPicksが本格スタートしました。最初は数人のチームでしたが、それまでいなかった編集者やデザイナーといった、今までよりさらに自由なかんじのメンバーがどんどん増えてきて、「2人目、しかもやんちゃな子が生まれちゃったね」みたいな状態でした。

 

 

クリエイティブと管理の狭間で

松井:編集者やデザイナー、いわゆるクリエイティブ職の方々と言語が違うという感覚はありませんか?糸井さんはどのような方なんでしょう。

篠田:正直、入社後2年ぐらい、糸井の言っていることを理解しきれていませんでした。ミーティングで糸井が、「○○高原にリゾート開発をして〜〜」などと話したことがあるんです。私、リゾート開発の経験もないしどうしようと思っていたら、あとで別の乗組員(※注:ほぼ日では従業員のことを「乗組員」と呼んでいる)から「あれ全部たとえですよ」って。2時間ずっとたとえ話だったのに、私、分からなかったんです(笑)。

そういう意味では、糸井に限らずほぼ日全体が私にとって異文化体験でした。入社を決めた時から、私の中では「留学」だと思っていたんですよ。私が勉強しに行く側です。

松井:篠田さんにとって異文化な方たちに管理、コーポレートが大事だと理解してもらうために、どうされてきたんでしょうか。

篠田:「助かった!」と思ってもらうのが一番でした。最初にお話しした請求と支払について言えば、「お互い外部の方にちゃんとお金を支払いしたいですよね」と共通目的を見つけ、「こういう手順を踏んでくれたら間違いなく支払えます」と伝えました。そのうえで経理チームが社内をマメに歩き回ってコミュニケーションを取りながら、浸透させていきました。

松井:ユーザベースも似ています。管理しなければいけない目的を現場に伝えて、現場と一緒にやり方を考えていく。ルールをつくることと文化を融合させていくのが大事だと思います。

 

 

上場は、会社が戸籍をもつこと

松井:会社が大人になったな、ひとつフェーズを超えたなと思える瞬間はありましたか?

篠田:ほぼ日にとって「東日本大震災」は大きなきっかけでした。糸井は「上場は、会社が社会的に戸籍を持つようなもの」と言っていますが、震災後の被災地との関わりをとおして「私たちが社会にお役にたてることはなにか」と、社会的意義を徐々に意識するようになりました。

松井:ユーザベースの転換期は、上場を見据えてSPEEDA・NewsPicksの2事業が拡大し、従業員が100人を超えたときです。それまではお互いの顔が見えていたし経営陣の想いも比較的伝わっていたんですが、コミュニケーションの密度が下がり、相手の景色が見えなくなることがでてきました。そこでみんなが同じ方向に進むために、取締役の稲垣(現・共同代表)直下でカルチャーチームを発足させました。

篠田:それはすごい力の入れようですね。

松井:社内でもバリューが体に沁み込んでいるエース級の人材をアサインして、主にエントリー(採用)時点でのミスマッチを解消するのと、評価やフィードバックの仕組みを通してミッション・バリューを浸透させていきました。

でも上場を経て200人ぐらいになったときに、これだけでは不十分になってきました。

たとえば私たちが大事にしている「7つのルール」に、「自由主義で行こう」があります。とても大事にしているのですが、自由は自律あってこそなんですよね。そのトレードオフがなかなか伝わらなくなってきました。

そこで今度は、「31の約束」という冊子をつくりました。「7つのルール」のひとつひとつに対して、DO(すべきこと)とDON’T(すべきでないこと)を説明したものです。たとえば「自由主義」の項目だとDOは「ルールを守るか、自ら変える」で、DON’Tは「ルールを軽視する」。つまり、ルールを軽視するのはルールに対するリスペクトが足りないけど、もしルールが実態に即していなかったり不合理だったりする場合には自ら変えましょうということです。当時すでにグローバルに展開していたので、イラストを交えながら日本語と英語両方の言語で作りました。

 

「稟議ってなんですか?」問題

篠田:上場準備ってたいへんなんですが、求められる項目って、今振り返ると私達の規模の会社に一般的に必要とされるメニューが揃っているんですよね。組織運営に関する先人の知恵に基づいているのだと感じます。

たとえば稟議。小規模な会社だと社員同士の直接の信頼関係でまわっているので、「稟議ってなんですか?」と意義が見いだせないことが多いと思います。私もそうでした。

そこで自分で調べてみて、稟議とは「伝統的なピラミッド型組織における、組織の縦ラインの権限で決まった意思決定ルートには当てはまらない、イレギュラーな案件を決裁する手段」だと理解しました。一方ほぼ日では、機能をまたぐプロジェクトが常に自発的に生まれていて、それを前提に通常の意思決定ルートを定めています。ですので、それとは別のさらなるイレギュラーな案件はさほど多くないんじゃないか、という結論になりました。稟議規程は定めましたが、稟議が必要なのは限られたケースになるよう、整備しました。

 

 

松井:稟議について言えば、ユーザベースも苦労しました。

ユーザベースでいう「稟議」は、ほぼ日さんでいう「イレギュラーな案件を決裁する手段」とは少し違います。私の解釈では、会社が大きくなる中で、きちんと内部統制がまわりながらも、みんながより生産的な仕事に集中できるようにするための手段、それが稟議です。会社として活動するうえで「情報がスムーズに収集され、適切な人に決裁され、支払いや請求が適切に行われ、そしてその証跡が残る」ことが重要ですが、そこに時間を使い過ぎないために必要な手段だと考えています。

ユーザベースもほぼ日と同じで、昔も今も性善説に基づいている会社です。私が入社した当時も、チームできちんと話して、報告もして、それに基づいてきちんとビジネス上の意思決定がなされていたので、稟議の必要性ってあまり感じられず、「稟議ってなに?」という状態でした。ただ、会社が大きくなる中で必要で、かつみんなの仕事を楽にするものということを繰り返し説明して、今はかなり浸透しています。

上場を経てからも、本当に統制をきかせる必要があるのか?という観点で何度も見直しをして、スリム化もしてきています。どんどん新規ビジネスが生まれたり、規模が大きくなったりする中で、ルールの在り方も変えていく必要があるなと日々悪戦苦闘しています(笑)

 

 

「24時間働きたい」をどう管理するか

松井:自由なカルチャーの課題として、労働時間の管理もありますよね。24時間好きなときに好きなように働きたいのに、それを管理するとは何事だとなりませんでしたか?

篠田:データからわかる事実として、勤務時間が長い状況が続くと、身体を壊します。乗組員とは長く一緒に仕事をしたいので、「集中して頑張るのはいいけど、長時間労働がずっと続くのはお互いにダメ」と言い続けています。

ほぼ日では、健康に働き続けるというトピックは、世の中で労働時間に関するルール遵守が厳しくなる前からやってきたことなんです。 労働時間管理に関わる取り組みではないのですが、会社として働く人の健康に対して本気で取り組んでいくために、2010年には「虫歯のない会社宣言」というコンテンツを立ち上げました。 健康に働き続けることは、自己管理の範疇でもあるし、環境を司る管理部門の仕事でもあると考えています。

 

ワーキングマザーであるという共通点

松井:労働時間の問題でいうと、私たち二人には、母親でもあるという共通点があります。子育てと仕事の両立についてはどのように考えられていますか?

篠田:時間の制約がない方が、たくさん働けるのは事実だと思います。子どもがいなければもっと働けるのにと思われる方も多いと思いますし、私も実際そうでした。でも制約があるから、大事な仕事を見極めるスキルを上げるしかないんです。

またチームにどんどん頼り、手が足りない時は業務の外注もする。私は子どもがいなかったら、人に任せることが苦手なままだったと思います。上場準備にあたったチームメンバーは全員、その人がヒーロー・ヒロインになった場面があるんです。もしも私に時間の制約がなくて、夜も1人でバリバリ働いていたら、そんなチームにはなれなかったかもしれません。

松井:どんなメンバーも、子育てじゃなくても介護だったり家族の事情だったり、なにかしらの事情を抱えていると思います。それを理由で仕事にブレーキをかけるというのは本質的じゃないですよね。私は料理の優先度を下げているので、スーパーのお惣菜にはすごくお世話になっています(笑)。

篠田:わかります。上場準備の時期にUBER Eatsの配達エリアに入ったときは「神風きた!」と大喜びしました(笑)。

 

 

自由と上場は両立できる

松井:最後に、管理部門の責任者として、自由な組織を今後どうマネジメントされていきたいとお考えですか?

篠田:まず前提なのですが、自由な組織では、メンバーは自らの動機に基づき、制約、コスト、リスクも理解しながら、やりたいことを実現するんだと思います。「管理部門がやってくれる」ではなく、企画チームが管理部門的な視点も踏まえて、自律的に意思決定できるようになるのが、私の思う「自由」です。企画チームに投資や契約の意思決定を任せる状態を整えるには、どうすればよいだろう、といつも思考実験しています。今は、管理部門のメンバーに、事業チームにも入ってもらうこともはじめています。

松井:お互いの景色が見えることは大事ですよね。私は社内のいろんなプロジェクトに関わる機会が多く、そのおかげで「管理のための管理」にならないようにできています。ただ今後、会社の規模が大きくなる中で、そのカルチャーをどう維持していくかが課題です。

篠田:企画の自由な意思決定を支える役として「管理部門のメンバーにも一緒に考えてほしい」って言ってもらえる関係を作り、育てていけば、自由なカルチャーと上場は、両立できると私は思います。

松井:上場は管理コストがかかりますが、良いこともたくさんありますよね。上場と自由はけっして相反するものではない、と私も思います。

 

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